頭の中のふきだまり

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ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 感想

辻村深月さんの本読もうと思って、軽い気持ちで選んでみましたが、かなりヘビーな話でした。前半が幼馴染を探すみずほ視点で、後半が逃亡しているチエミ視点、最後に再会するという流れは、朝が来るみたいな構成だなと思いました。朝が来るは、不妊と養子縁組という明確なテーマがありましたが、この作品は色んな要素が混ざっているような気がしました。

タイトルのゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。はチエミの母親の遺言であり、暗証番号であり、チエミの誕生日を示しています。産むことを許さなかった母親が、死ぬ間際に逃げて産みなさいと娘を肯定していて、母親から娘への愛情を示したタイトルだなと思います。なので、親の愛情というところがメインテーマなのかなと思いますね。

チエミは母親に依存していて、すべての決定を母親に託すような生き方をしていて、そんな歪みを抱えた親子関係になっていました。また、みずほは母親から虐待のようなことをされていて、これもまた歪んだ愛情を注がれていました。子供は自分の家の環境が普通だと思って過ごすけど、他者から見たら気持ち悪い関係だったりすることはかなり共感できました。この作品は、そういう歪んだ関係性に対して解決策をもたらすというよりは、こういう気持ち悪い関係ってあるもんだよねと改めて気付かされてるような作品でした。個人的な感想としては、愛情を注ぐのはいいですけど、それで子供を支配するのは、チエミのように自分で考えられない人になりそうですし、子供に対して思うことはあってもアドバイス程度で収めて、ああせいこうせいと口うるさくするのはいい関係性じゃないかなと思います。あまりに小さいうちは子供の言動に親が責任ありますけど、子供は子供の人生があるわけで、自分の道は自分で歩んでほしいし、自分もそう思います。先に死ぬ人の言うとおりにずっとしていたら、いなくなった後にどうしたらいいかわからないですよね。

また、親子関係以外にも、学歴の違いによる世界観の違いもテーマにあったと思います。この作品では女性のコミュニティの中での話が多かったですが、ブルカラーとホワイトカラーの対立みたいなところと本質は同じかなと思いました。私は大学を出ていて、どちらかというとホワイトカラーの人生を歩んでいて、ブルーカラーの人達と交わったことのない人生でした。一時期、ブルーカラーの職場にいたことがあるのですが、大学にいかずに18から働きはじめている方々は立派だなと思いましたし、中にはあんまり自分で考えないで仕事してる人もいましたが、しっかり考えて働いてるし人も多いと思います。チエミが正社員になれないのは常に受け身な働き方しかできないわけで、人生に対する意識が低いからなんだと思います。地方にずっといて短大をでて契約社員で働いていても、会社のことを思って考えて行動できる人間なら普通に昇進しそうですし、どういう人間なのかってことが大事なのかなと思います。大学出てても、大学はただ遊んでただけで、人生の意識が低い人はもちろんいますよね。ただもともと自分の人生をこうしたいみたいなモチベーションがある人は大学に行く選択を取る人が多いのかなと思うので、たしかに、大学に行く人と、地元のコミュニティに残る人の間でなにか違いがあるのはそうなのかなと思いました。