頭の中のふきだまり

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Nのために 感想

湊かなえさんの小説、Nのためにを読んだので感想を書きます。最初に夫婦の殺人事件について、関係者の警察の取り調べに対する供述が語られ、表面上の事件概要が語られます。ただ、全員隠していることがあり、それぞれがそれぞれのNのために動いていたことが、わかっていくという流れでした。

成瀬は高校時代に杉下に奨学金を紹介してもらったり、放火の疑いから助けてもらったりなどの恩があり、杉下に協力する形でした。ただ、成瀬が事件現場に到着したときは、もう事件は終わっていて、事件については重要な人物ではなかったですね。杉下のシャーペンの合図について悶々とするところがいいですね。4つはたすけてで5つはありがとうなんだけど、全然意図を汲み取れてないところが男っぽいです。

安藤は事件に関係するところは、チェーンをかけてしまったところでしょうか。なんでチェーンをかけたのかは、あまり汲み取れなかったのですが、仲間はずれにされた腹いせみたいな感じだったんでしょうかね。このチェーンのせいで杉下と西崎が逃げられず、奈央美が自殺することになったのかと思います。安藤が杉下のために動いたところは、ゴンドラからの景色を見せたところですよね。安藤と杉下の関係は恋愛じゃないと思うけど、お互いを思い合ってる関係だったと思います。

杉下はかなり深刻な家庭環境で育っていて、追い出した女に頭をさげて食事を恵んでもらうところとか、母親が狂ってしまっていて、贅沢病を発症してたりなど、しんどい環境だと思いますね。狂った人間と一緒にいると自分も壊れてしまうというのはよくわかるので、食事をたくさん作りすぎてしまうという形で杉下に傷を残した子供時代だっと思います。成瀬に対するありがとうのサインは、お城を燃やしたいと願っていた自分の代わりに、燃やしてくれたことで気が晴れたような感じでしょうか。成瀬側からしたらありがとうの逆に受け取ってしまうのもしょうがないですね。また、殺人事件の際は、安藤のために、野口さんに西崎のことを告げ口していて、安藤への思いも強いものがあると感じられます。

西崎のパートはここだけ毛色が違ってて、暴力と愛情がテーマになってたと思います。愛情を暴力として表現するのは理解できないですし、結構クレイジーなパートだったと思います。奈央子と同じ立場だと思う西崎ですが、奈央子には愛されておらず、奈央子は杉下と西崎を別れさせるために西崎と関係を持ったようでした。野口氏の暴力を受け入れており、正直作中で一番理解できないキャラでした。野口夫妻は共依存の歪んだ関係になっていて、そこに他者が関係してくることで、殺人という結末になったのかなと思います。狂った人とは関係を持たない方がいいですね。

真相が気になってどんどん読みましたが、読後感は微妙な感じでした。様々な愛の形があるのかなって感じですかね。