頭の中のふきだまり

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ストーリーテラー 感想

有川浩さんのストーリーテラーを読み終わったので感想を書きます。以下ネタバレありです。

 

 

AsideとBsideの話があり、共通してるのは、妻が作家で夫が読書家という点です。そしてAでは夫視点で話が進み妻が亡くなり、Bでは妻視点で話が進み夫が亡くなるという、AとBが対になるような話でした。

Aについては、彼が彼女の小説を偶然読んでしまうという展開で距離が縮むのですが、いきなりキスする展開は、えって思いました。ただ有川浩さんらしいような気もしましたね。また、妻の家族や大学時代の知人がクズだらけで、そんなクズにメンタルをやられていく妻が見てて辛いなと思いました。思考によって寿命が削られるという病が作家との相性が悪く、作家を辞めることはできても夫のために物語を書くことは辞められないというところが、二人の愛を表しているような気がしました。

Bsideは複層的な構造になっていて、作家の妻が夫が難しい病になったときに、その辛い結末をあえて小説にすることで、その結末にならないように、小説の内容が逆夢になるようにと、小説を書くという話でした。3重の構造みたいになってて、作中で小説を夫に読ませていて、それ自体も最終的には小説であったような内容でした。作家だからこそ想像力を呪いのようにして夫の無事をねがうところが痛ましく、心揺さぶられました。

有川浩さんの作品は基本的にハッピーエンドなので、配偶者がしんでしまうという悲しい話を書いているのが珍しいなと思いました。実はこの小説が有川浩さんにとっての逆夢であり、大切な人が病になっちゃってるのかななんてことも思いましたね。