頭の中のふきだまり

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ツナグ 感想

辻村深月さんのツナグについて読了したので感想書きます。ネタバレ有りです。

 

 

 

死者にもう一度会いたい人に、一晩だけ会わせられるツナグを巡る物語。ツナグを利用する人の物語が4つあって、最後にツナグ側の青年、歩美の視点で物語が語られる流れになっています。章ごとに主人公が変わるので短編集みたいな感じもします。

3番目までのツナグ利用者の話はそんなに共感できない感じでした。ただ、4番目の待ち人の心得の話は結構好きでした。彼女のほうは一緒になると決めていて、実家に帰るときに事故にあい亡くなってしまったという真実が切ないですね。結局二人が会うことで真実がわかり、待ち続けた人も未来を生きていけるようになったのかなと思います。

そして、最後の章はこの作品の柱みたいな位置づけだと思います。歩美はツナグだと思いきやまだツナグにはなっていない存在で、見習いとして窓口をやっていました。歩美が死者を呼び起こすことや両親の死、そして両親に会うべきなのかを苦悩します。両親の死の真相については、父親がツナグをやっていて、母親が鏡を覗き込んでしまったからでした。祖母は、母親が、ツナグをやっている父親を疑って鞄を漁ったときに鏡を見てしまったのではないかと言いますが、歩美は父親は母親にツナグのことを打ち明けていて、父を祖父に会わせるために鏡を使おうとしてしまったのではないかと考えました。結局歩美は両親に合わない決断をしたため、本当のところは分かりませんが、思いやりが故に悲劇が起きたという話は悲しい話ですが、温かみもある話だと思います。結局、死者に対してどう関わって、残された生きている人たちがどう生きていくかは、生者次第だよねってことが言いたいことなのかなと感じました。

辻村深月さんらしい圧倒的な暖かさとか希望みたいなのはそんなに感じなくて、個人的にはそこまで刺さらなかったのですが、それなりに面白かったので、続編も機会があれば読みたいかなと思います。