頭の中のふきだまり

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明日の子供たち 感想

有川浩さんの作品ですが、めちゃくちゃ良かったです。地味に有川浩さんの作品の中で一番好きと言っていいかもしれないです。

ネタバレ含みます。

 

 

ネタバレになりますが、この作品は実際に児童養護施設に居た方が、児童養護施設の実態を世の中に広めるべく、有川浩さんに本にしてほしいと手紙を送ったことから始まってます。この本のラストも、奏子が有名な小説家の方に児童養護施設を題材に本にしてほしいと頼む手紙を出すところで終わっていますね。実際に手紙を送った方の行動力も素晴らしいですし、その手紙を受けて小説にした有川浩さんも素敵だなと思います。有川浩さんらしい暖かさ、読みやすさがありつつ、児童養護施設に入っている人のリアル意見が良く伝わってくる作品でした。

この本を読んで一番衝撃だったのは、施設に入っている人は、大学進学は勧められず基本的に就職を推奨されるということでした。施設出身者は施設から出たあと身寄りがないために、学費や生活費、居住費を自らの力で工面しなければなりません。奨学金が学費の足しになるとはいえ全ては賄えないですし、生活費、住宅費を賄うためにバイト戦士になる必要があります。病気でバイトができない期間があるとそれだけで資金が底をつき大学中退となってしまうのはなかなか厳しいなと思います。また、大学進学の資金を作るために高校の時からバイトをする必要があるというのも衝撃でした。

私はこれまで、貧しくても勉強を努力すればいい大学にいけて、お金がなくても奨学金でフォローされているものだと思っていたのですが、それはそもそも住環境が整ってる人の場合なんだなと気づきました。優秀な人がお金がないだけで大学に行けず社会で埋もれていってしまうのは、社会としても損失だと思います。教育は未来への投資であり、国を豊かにするのに不可欠なものです。児童養護施設にお金をかけてほしいと思っている大人が少なく、票につながらないため、政治に反映されないという流れもありますが、児童養護施設への政策も手厚くして行ってほしいなと思いました。

あと、他にこの本での言いたいことは、施設の子供はかわいそうではないということですよね。LGBT身体障害者の方などのマイノリティにも言えることですが、ハンディキャップに見えることは、本人としては個性であったりそれでも幸せだったりするわけで、赤の他人から可愛そうと言われることはムカつくことなんだなと思います。施設にいたからこそ身についた個性経験もあるわけで、実際自衛隊では施設出身者は集団生活になれているため評判がいいという内容もありました。多様性を認めようということが叫ばれていますが、固定観念や色眼鏡で判断しないようにしたいなと思います。

この作品は物語としても有川浩さんらしくてすごい好きでした。青臭くてまっすぐだけど営業としての社会人経験を武器に認められていく三田村は有川浩作品の登場人物ぽいなと思いましたね。この作品を読んで児童養護施設について知れてよかったと思いますし、多くの人に読んでもらいたい作品だと思います。