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東京會舘とわたし 感想

東京會舘とわたし 感想

 

辻村深月さんの東京會舘とわたしを読み終わったので感想を書きます。東京會舘という建物について、歴史をなぞりながら、それぞれの時代の物語を紡いだ短編集のような長編作品になっています。

東京會舘は私は知らなかったのですが、戦前の関東大震災があった年に建てられた、宴会場やレストランなどがある建物で、当時高級レストランなどの文化が一部の貴族のような人たちだけのものだったのを、庶民に広めていこうという理念の基、作られた建物でした。

一章から、関東大震災の年のクライスラーの演奏会を見に行った青年の話、戦争直前に東京會舘政治結社に譲り渡す時の話、戦中の結婚式の話、GHQ時代のバーテンダーの話、持ち帰り用のお菓子を開発した男の話、金婚式となる日に東京會舘を訪れた女性の話、越路吹雪さんのディナーショーの話、東日本大震災の日に東京會舘に世話になった人の話、直木賞を受賞した作家の話、最後に4代続けて東京會舘で結婚式を挙げる女性の話でした。

戦前から現代まで2度建て替えられてなお、そこで働く人達の人柄が変わらず、高い階級の人だけのものだった文化を広めるという理念が現場に浸透してるところが素晴らしいところだなと思います。持ち帰り用のお菓子を開発したことやクッキングスクールがあることは、本物の味を世の中に広めていくという理念に基づいた事業であって、理念とやってることが連動してていい会社だなと思いました。

特に好きだった話は、6章の金婚式の日に東京會舘を訪れる女性の話ですね。建て替え前の旧館にて旦那さんと多くの思い出を作った女性が、旦那さん亡き後に、金婚式となる日に新館を訪れる話でした。東京會舘が建て替えられて装いがモダンになったとしても、これまでの伝統や理念はしっかり守っていて、変わらずお客さんをもてなす心がいいなと思いました。

他にもお客さんをもてなす心が感じられるエピソードが毎回出てきて一度は東京會舘に行ってみたいと感じました。